近年のLo Fi HIP HOPブームなどでも再評価され、海外での人気も非常に高い日本人アーティストNUJABES
そんなNUJABESのオススメのアルバムを厳選してみました!!
インストHIP HOP、RAPが入った曲、本格的な歌物、生演奏のピアノ曲、サックスメインの美麗な曲まで、幅広い曲調で世界中の音楽ファンを魅了してきたNUJABESですが
自身のNUJABESに魅せられた歴史を含めて、2019年再びその軌跡とアルバムを紹介していきたいと思います
Contents
FIRST COLLECTION HYDE OUT PRODUCTIONS
ハイドアウトレーベルを世に知らしめた、傑作ファーストとも言える2003年の作品です。
個人的にこの作品を知ったのは次の年の2004年位で、教えてくれたレコード屋の友人に涙しながら感謝の電話をしたことを今でも鮮明に覚えています。
当時のUSのHIP HOPはスウィズビーツなどの打ち込み主体の曲が主流になっていて、DJプレミアやピートロックなどのサンプリング主体のプロデューサーが、それまでの快進撃が嘘のようにセールス的に苦戦し、「打ち込みVSサンプリング」の熾烈な戦いが繰り広げられ、実勢的にはビルボードのチャートアクションがよかった打ち込み曲が勢いでは勝っていました。
そんな中で出た本作は、サンプリングHIP HOP好きには救世主的な役割を果たしてくれたアルバムでした。
UK HIP HOPのような質感」とか「音が悪すぎ」などの賛否両論もありながらも、サンプリング主体のプロダクションに飢えていた我々は競うようにNUJABESのアナログレコードを探したものです。
大人気曲となったFunky DL /Don`t Even Try Itなどはアナログレコードが大争奪戦となり、当時はクラブで90`S HIP HOPに混ぜてかけてもなかなかの反応で、トライトンサウンド全盛の中でサンプリング系の曲が聞けるという感動を与えてくれた曲でした。
そんな本作はNUJABESの作品の中でもとりわけ、それまでの90`s HIP HOPを踏襲したHIP HOPマナーに沿ったような内容が多くなっています。
CDには謎に歌詞の和訳が入っていたりと、初期の試行錯誤のあとが伺える仕様となっています。
そんな本作の目玉は何と言ってもFunky DL /Don`t Even Try Itでこの曲だけでも買う価値があると言えます。
流麗なピアノリフをサンプリングし、サビでの大胆な展開、ブリッジでのエモーショナルなスクラッチなど日本人が好きなサンプリング曲のツボを押さえまくった曲で、スネアの音などもみんなが大好きな音で分かってる感が半端ないです。
過去の自分の曲をスクラッチに入れていくあたりもツボで、Lyrical Terroristsのアナログレコードもこの曲の登場とともにさらに価格が高騰したのを覚えています。
そして名曲Luv (Sic)の誕生もこの瞬間からでした!!
まずは元祖Luv (Sic)は基本タイトな曲調でHIP HOPマナーを強く意識し、スクラッチやピアノのチョップ&フリップのうわ音にもその趣向が垣間見えます。
そしてイントロの曲紹介からのラージアプレジャー的な拍手がエモーショナルで、そのギミックに感動し自分も初めてのプロデュース曲で真似した思い出があります。
そして最後に収録されたLuv (Sic) pt2を聞くと、「Luv (Sic)からの曲調の振り幅に涙できる」具合の感動を感じ、同時にShing02の凄さに驚かされます。
2は洗練されクールな感じのLuv (Sic) に比べると優しく慈愛に溢れたような曲で、Shing02のリリシストぶりが遺憾なく発揮されています。
イントロのスクラッチからしてキレがあり最高で、そこに優しいうわ音とディケイの調整がいい感じのタイトなドラムがのり、後のNUJABESのイメージを作るきっかけの曲であると思います。
metaphorical music
当時NUJABESに夢中だった自分としては「なぜ???」と言う思いもあり、あまり好きになれなかった時もあったのですが、後にこのアルバムがNUJABESがNUJABESたる証明となり、このアルバムが転換期だったのかなとも思わせてくれるアルバムです。
というのもアナログで出たLady BrownやF.I.L.OがDMRあたりで結構簡単に買えてしまい「NUJABESどうした?」という声もあがり、クラブでの反応もDon`t Even Try Itなどに比べると格段に弱く複雑な心境がはじめはあったからです。
当時はDJをやっていた自分としては、CDよりもとにかくアナログレコードを買うことが至上命題で、「せっかく久々CD買ったのにー!!なんやねん」とモヤモヤがつのっていました。
しかし、その当時たまたま東北方面に車で旅行に行った時に、このアルバムをエンドレスリピートして行ったのですがその時に「Kumomi」や「Letter from Yokosuka」や「The Final View」の美しさに気付き、一緒に旅行に同行した友達からも「このCDって何めっちゃいいね」と言われたのを覚えています。
皆が「松島や ああ松島や 松島や」と言っている時「NUJABESや ああNUJABESや NUJABESや」と思いながら松島を眺めていたのをいまでも鮮明に覚えています。
そんな美しいうわ音とタイトなドラムの融合がこのアルバムでは顕著になってきています、「Kumomi」や「Letter from Yokosuka」や「The Final View」などを聞くとその傾向がより分かりやすくなっています。
modal soul
とある日曜日にぼーっとTVを見ていた時にその事件はおきました。
某携帯電話のCMで「reflection eternal」が流れ「NUJABESも有名になったなー、一流企業のCMソングかーすごいなー夢があるなー」と思って聞いていましたがクレジットを確認すると???!!!
それはNUJABESではなかったのです、これがかの有名な勝手にサンプリング曲を盗用事件でした、その後NUJABESファンの結束力?またはコンプライアンスなのか、このCMはすぐに姿を消しました。
そんな風にNUJABESが有名になり、この頃からインスト曲がその代名詞にもなってきた頃でした。
アルバムに入るラッパーも、Shing02、Substantial、Apani B、Pase Rockなどに固定され、HIP HOPを強く意識していた初期の頃から変化が多くみれたアルバムとなっています。
この頃からストリングスも多くなり、NUJABES風といえばストリングスを挿すみたいな感じが、自分を含めたトラックメイカーの間では常識となり、その作風が真似され多くのNUJABESフォロワーが現れてくるようになってきている時代でした。
某友人も「NUJABES?あ、年に何回か無性に聞きたくなる時もありますね」というようにHIP HOP好きと音楽ファンに双方から支持され、タワーレコードなどで強くプッシュされるようなアーティストとなり、その存在の定義について多く語られ議論されるような時代へとなってきていました。
そんな中でも「flowers」はとても好きな曲でこの声ネタの繰り返しからの展開に当時自分のトラックメイキングにも多大な影響をもらいました。
ジャケットの過度期的な感じも哀愁が漂い、当時の時代感を表している感じがしてなりません。
2nd Collection HYDEOUT PRODUCTIONS
このアルバムが出た2007年頃はカニエウエストなどが革新的なサンプリング方法を確立し、US HIP HOPがその力を取り戻し国産のサンプリングHIP HOPやUK HIP HOPがややマニアックな感じに傾倒していくような時代でした。
そんな中で出た本作は、それまでにない衝撃を与えてくれるアルバムとなりました。
それはクラムボンとの競演、まさかの日本語の歌詞曲のアルバムへの収録、オール歌だけで構成された「Imaginary Folklore」の存在でした。
自分は今までに連続100回聞いたくらいの勢いで聞いた曲がいくつかありますが、「Imaginary Folklore」はまさにその中の一つでした。
ピアノの美しさ、曲の展開の綺麗さ、途中で入ってくる合唱的な部分のエモーショナルな感じに日本語の歌詞が乗り「あと、少しで」というパンチラインにとても衝撃を受けました。
この曲のDOPEとエモーショナルの程よいバランスは、のちの自分の楽曲制作にも多大に影響を与え、「この曲のような曲をいつか作れるようになりたい」というのが自分のライフワークの一つになっていると言える名曲です。
クラムボンといえばブルーハーブとのコラボ「あかり from HERE」でさらなる衝撃を与えてくれましたが、こんなアーティストが同じ時代にいることに感謝と尊敬を禁じえないアーティストの一人と言えます。
(このライブ映像は狂気と感動などありとあらゆる感情を与えてくれる稀有な存在です)
そんな名曲を筆頭に、まさかのC.L.Smoothとの競演曲「Sky is falling」もサックスがドラマティックで、ベースラインがとてもジャジーな良曲です。
Substantialとの「Hikari」もストリングスの感じが気持ちいい曲でこの頃のNUJABESの円熟具合を表していると言えます。
またLuv sic modal soul remixなどはこの頃の方向性をよく表していてUS HIP HOPでもUK HIP HOPでもないNUJABESという世界観が確立され、それが今日再評価され世界中で愛され曲を聞かれ続けている原動力になってきていると個人的には思っています。
そして2010年、その衝撃的なNEWSを最初はYahoo Newsで知りました。
NUJABES交通事故で他界。
当時の多くのNUJABESファンは絶句し、これが誤報であることを願いました。
しかし、それは事実で多くの音楽ファンを悲しませることとなりました。
しかしながらNUJABESの残した音楽は時を超え愛され、テニスの錦織圭選手もその音楽を愛し、試合の前のリラックスと集中のために聞くなど、多くの人々の中で永遠に生き続け、今でもその魅力から多くのファンを増やし続けています。
Luv (sic) Hexalogy
NUJABESが死去し正直Luv (sic) pt5が好きになれなかった自分としては、BASS MUSICなどに音楽的な興味を奪われ期待もしていなかったアルバムでしたが、Luv (sic) Grand Finaleの気持ち良さと、Luv (sic)シリーズの持つ力に魅せられ全曲インスト収録という新たなLuv (sic)の楽しみ方に衝撃を受けたCDでした。
とにかくLuv (sic) Grand Finale の持つ包容力と、無限の異空間に引き込まれるような気持ち良さが素晴らしい内容のアルバムです。
Pt.5でドラム抜きのイントロから始まる「それじゃない感」に感情移入できなかった自分もこの曲で救われ、NUJABES氏へ対し自分の人生の中で総括し心から追悼するきっかけを与えてくれるアルバムとなりました。
Luv (sic)の答えをNUJABES亡き後にShing02が示してくれたと思えるアルバムです。
あとがき
NUJABESのアルバムとしては2011年に出た「Spiritual State」もあり、ハイドアウトコレクションはNUJABESのアルバムではないという見解もあるかと思います。
しかし、DJ、MC、トラックメイカーをしながらNUJABESの音楽を聞いてきた自分としてはこの5枚がもっともよく聞き、もっとも影響を受けたものとなりました。
そんな自分が感じた「リアル」をこのセレクトから感じNUJABESへの興味のきっかけとなってくれたら幸いです。
この記事は情報をまとめるとかではなく、一人の人間がNUJABESというアーティストの音楽と向き合ってきた10数年の軌跡をいつか書いてみたいと考えていた備忘録です。
氏の命日に、「今でも多くの人の心の中にNUJABESの音楽が生き続けている」ことを記しておきたいと思います。
Apple Musicでもその素晴らしい音楽を聞くことが可能です。
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